牛黄とは

牛黄はウシ科ウシの胆石です。「牛黄」は今から二千年以上前に著された中国最古の薬物書の「神農本草経」にも効果が記されている重要な生薬です。

 日本でもすでに七世紀には宮中で貴重な妙薬として用いられていました。江戸時代になると大名や富裕層にも広がりましたが、とても高価で一般の人には手の届かない存在でした。

 牛黄が高貴薬といわれる所以は、ウシ1000頭に1個採取されるかわからないほど、貴重なものだからです。中国明の時代の『本草綱目』という生薬の書物にも「薬物として高価なることこれ以上のものはない」と記されています。

『第十五改正日本薬局方解説書』の薬理作用によれば、血圧降下作用、解熱作用、低酸素性脳障害保護作用、鎮痛作用、鎮静作用、強心作用、利胆作用、鎮痙作用、抗炎症作用、抗血管内凝固作用などが掲載されており、適用としては、動悸による不安感の鎮静、暑気当たりに対する苦味清涼、のどの痛みの緩解に粉末にしたものを頓服すると記載されています。

実際、牛黄は下記のような病気の治療に用いられてきました。

『神農本草経』

・驚癇寒熱(きょうかんかんねつ)・・・急に何物かに驚いて卒倒して、意識不明・昏睡状態になること
・熱盛狂痙(ねっせいきょうけい)・・・高熱が続き痙攣を起こし、それにより精神に異常をきたすこと
・邪を除き、鬼を逐ふ・・・身体に悪い影響のある邪気をとり除き、死人の祟りの鬼気を逐い払う作用

『神農本草経集注』(『名医別録』の引用として)

・小児の百病・・・子供のあらゆる病気
・諸癇熱(かんねつ)で口の開かぬもの・・・高熱を出して歯を食いしばり口がひらなくなる方
・大人の狂癲(きょうてん)を療ず・・・大人の精神が乱れた状態を治す
・久しく服すれば身を軽くし、天年を増し、人をして忘れざらしめる・・・長期にわたって服用すれば、身体の調子が良くなり、寿命を延ばし、物忘れがしないようになる。

芳香開竅薬(ほうこうせいかいきょうやく)としての牛黄

牛黄は、独特に香りによって、身体の9つの穴(竅)を開き、身体の邪気を取り除くとされています。
現代の中国でも、脳卒中や脳梗塞などの脳血管障害による意識障害に用いられており、古い書物に書かれている適応と一致しております。また、牛黄の薬理作用の一つに末梢の赤血球数を著しく増加させるといった文献があるところからも認知症などの脳血管障害には有効に用いられるているようです。